奈良県「正倉院展 2018」へ
「我が岡に さを鹿来鳴く 初萩の 花妻どひに 来鳴くさを鹿」(大伴家持)
開設は明治13年2月14日、年間の観光客数は約1300万人、総面積は511.33haで天然記念物である『奈良の鹿』の生息数は1360頭(平成30年調査 雄:355 雌:767 子鹿:238)、大仏『東大寺盧舎那仏像』が有名な『奈良県立都市公園 奈良公園』。
「びいと啼く 尻聲悲し 夜乃鹿」(松尾芭蕉)
薄ら明るい朝6時、紅葉の見頃にはまだ早い『奈良公園』を散策すると、至る所から「びぃー」「ぴぃー」と鳴き声が聞こえてきます。
六角形の『浮見堂』が浮かぶ鷺池(さぎいけ)の水面には微かに霧がかり、『飛火野(とぶひの)』では子鹿が朝食をとっていました。
もうすでに写真撮影の団体さんが、シャッターチャンスをねらって待ち構えています。
まだ朝も早いため、いつも観光客でごった返す『東大寺 中門』の前は誰もいなく、時折早朝ランナーが前を横切るだけです。
観光客ではない人がじょじょに現れて、『鹿せんべい』の販売所や『石焼き芋』の屋台、店舗などで開店の準備を始めていきます。
9時には、『奈良国立博物館』で毎年秋に開催される恒例の『正倉院展』(第70回:10/27-11/12)へ向かいます。
『正倉院(しょうそういん)』には、奈良時代(710-784)の宝物を中心に約9000件が納められており、今回の『正倉院展』はその内の56件が出陳されています。
開催期間は原則として約17日間で、一度出陳された宝物は10年間は出陳しないという慣習があります。
平日早朝からにも関わらず館内は多くの人が展示物に群がり、一点一点をちゃんと見るには大変な苦労です。
今年の目玉は『玳瑁螺鈿八角箱(たいまいらでんはっかくのはこ)』で、緻密な細工と美しさは見応えありです。
個人的興味は、絞り染めの上着『浅緑目交纐纈絁襖子』と女性用の裳(も)『錦紫綾紅臈纈絁間縫裳』で、当時の特別な衣装が気になります。
じっくり魅入るのは難しかったので、はたして土日祝だとどれほどの混み具合になるのでしょうか…
『正倉院展』を堪能した後は、『奈良国立博物館』のすぐ外で販売されている『正倉院展』記念弁当の『薬膳弁当(1200円)』を奮発購入です。
内容は、「十穀米ご飯・海老のXO醤炒め・素肉(大豆肉)の黒酢炒め・南瓜.春菊.エリンギの揚げ物・クラゲの甘酢・大根の柚風味漬」で、美味しく満足です。
東大寺境内の西にある『転害門(てがいもん)』(轉害門)へ向かいます。
762年に建立された「三間一戸八脚門」形式を持つ門で、南西角の痩せて節の目立つ柱だけは建立時から1300年近く経つ現在まで門を支えているそうです。
他の3本の柱は時代は異なるが柱が入れ替えられており、南西角のこの柱は切り出す前と建立時からの環境がほとんど変わらなかったため劣化が遅くなったのではと、たまたま転害門にいたガイドさんが宮大工にそう聞いたと話してくれました。
何にしても柱になるほどの巨木がこれだけ痩せ細るほど、気が遠くなる年月の中でさまざまな歴史的な出来事や、常に浴びている日差しとどれほどの自然災害に耐えてきたかと思うと驚きです。
ただ、10年以上前から周辺に住み着く野良猫たちによる爪研ぎのひっかき傷や尿害は、ひっそりと立つ『転害門』には被害が甚大で、罪など無い猫たちにとって歴史的な価値は「奈良猫の耳に念仏」で意味はなかったのです。
*
★法隆寺へ
「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」(正岡子規)
607年創建と伝えられ、『金堂』『五重塔』を中心とする『西院伽藍』・『夢殿』を中心とする『東院伽藍』からなる『聖徳宗(しょうとくしゅう)』の総本山『法隆寺(ほうりゅうじ)』。
飛騨・天生峠で知った『止利仏師(とりぶっし)』が手がけた『金堂(こんどう)』の『釈迦三尊像(しゃかさんぞんぞう)』。
『上御堂(かみのみどう)』では、毎年3日間(11/1-11/3)だけ開扉される『釈迦三尊像』と『四天王像』、春に続き秋季開帳(10/22-11/22)されている『夢殿(ゆめどの)』では秘仏『救世観音像(くせかんのんぞう)』に直接出会うことができます。
『大宝蔵院(だいほうぞういん)』には数多くの寺宝が納められており、待望の『玉虫厨子(たまむしのずし)』を間近で見られ、想像より大きかった(高さ233cm)ことに驚きです。
——
『奈良公園』『法隆寺』と、期間限定の展示・開扉・開帳を中心に巡る一日となりました。
これから奈良でも紅葉の見頃を迎えて、各処で賑やかになり見ても食べても楽しい美味しい最高の時期になっていくのでしょう。
本格的な冬が到来する前に、また奈良の何処かへ訪れようと思います。