日本の歳時記 – 彼岸 –
彼岸
暑さ寒さも彼岸まで、とはよく使われる日本の慣用句です。
彼岸は二十四節気である春分の日・秋分の日を中心として前後3日間、それぞれ7日間のことをいいます。寒さが和らいでくるのは春分の頃、暑さが抜けて涼しくなってくるのは秋分の頃。彼岸は季節の移ろいの目安となるのです。
仏教では「西方浄土」といって、西に極楽浄土があると考えられていますが、仏教では生死の境にある海を渡り到達する極楽浄土を「彼岸」、人間が生きている現世を「此岸」といいます。春分・秋分が宗教的な意識と結びついたのは平安時代だそう。延暦25年(806年)、早良親王死去に伴い、春分・秋分を中心とした7日間ずつお経を読んだ、と日本後紀に記されました。
春分・秋分の日には、太陽が真東から昇り真西へ沈みます。つまり彼岸と此岸が真っ直ぐに繋がるという日に先祖の供養をするのだといわれています。彼岸にお墓参りをする意味の元になっているのです。
2021年の春分の日は3月20日、春の彼岸は3月17日から3月23日、秋分の日は9月23日、秋の彼岸は9月20日から9月26日となります。
彼岸の初日は「彼岸の入り」、春分・秋分の日は「中日」、最終日は「彼岸明け」といわれます。お彼岸が7日間あるのは、中日には祖先を供養し、あとの6日は仏教でいう六波羅蜜を行うため。六波羅蜜と6つの修行のことで「布施」「持戒」「忍辱」「精進」「智慧」を指します。
彼岸花
別名を曼殊沙華。これは仏教の用語に由来します。一般的にはマンジュシャゲと読みますが、語源となったサンスクリット語では天界の花という意味を持ち、マンジュシャカと読みます。釈迦が法華経を説いた祝いに、天から花が降ってきたのだとか。その花のひとつが曼殊沙華だったと伝えられています。
彼岸花と呼ばれる所以は花の咲く時期が秋の彼岸頃だからですが、彼岸花の別名は数百種に及ぶとか。
死人花という何だか気味悪い別名もありますが、彼岸花には毒性があり、土葬だった昔に、モグラやネズミなどから遺体を守るため墓地に植えられたことにあるそうです。田や畑の土手に植えられたのも同じ理由で、作物を害獣から守る役割を担ってきました。
また、まるで火が燃えさかるような彼岸花の姿形から、狐の松明とか狐のかんざし、龍爪花、雷花とも呼ばれるそうです。
文 / 宮崎 ゆかり