水の都で甘菓子を求めぶらりと..

岐阜県大垣市は、湧き出る水に恵まれる「水の都」と呼ばれています。
木曽川・長良川・揖斐川(いびがわ)からなる木曽三川によって運ばれた土砂の堆積によって地下水盆が形成されたことで豊富な水が地下に流れ込む恩恵を得た地が大垣(おおがき)です。
かつては各家庭に水が自然に湧く井戸槽(いどぶね)を持っており地下水を生活に活用していましたが、近代にその豊富な地下水を利用する繊維産業が盛んになったことで水位が下がり、徐々に井戸槽はその姿を消していったと言われています。
現在の市内には、絶えず水が湧き自由に水を汲むことができる自噴井戸が24箇所あります。
その内の一つ、2003年(平成15年)に整備され地下138mから毎分最大369リットルもの水が湧き出る「名水 大手いこ井の泉」では、ご飯を炊き味噌汁を作るためにいくつものペットボトルに水を入れる人、水筒に水を入れる通りすがりの学生、いろいろな人が訪れるのがいつもの光景となっているようです。
そして、井戸の脇の窪みへと流れ込んだ水の中を涼しげに泳ぐ金魚を見つけることもできます。

夏に食べられる冷たいお菓子として明治30年(1897年)頃に考案された「水まんじゅう」は、4月中旬頃から9月上旬頃まで名水に冷やされている姿を大垣の町中で目にすることができます。
夏でも冷たい地下水を使ってねられた餡、くず粉とわらび粉などの配合によって透明度や食感などに店舗の個性があるとのことで、それぞれの店舗を巡って「水まんじゅう」の味比べもオススメとのことです。
白蜜のかかったかき氷が「水まんじゅう」の上に盛られたり、氷水に浮かべその冷たい水と一緒に「水まんじゅう」を口に入れたりと、暑く蒸すこの夏を存分に味わうことができます。
また、序文「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。」から始まる「松尾芭蕉」(1644-1694)の俳諧紀行「おくのほそ道」(1702年刊)の終着の地でもある大垣、そのことを記念して建てられた「奥の細道むすびの地記念館」では、200インチの大型スクリーンで芭蕉のおよそ150日2400kmに渡る旅の足跡を辿ることができます。
桜が咲く季節には舟下り・たらい舟が行われ、かつては大垣城の外堀を兼ねていた「水門川(すいもんがわ)」の水の流れに沿いながら、湧き上がる水と随所に置かれた芭蕉の句碑を巡り、歩き疲れたら冷たい甘菓子を口する、そんな片雲の風に誘われてぶらぶらするのも楽しくです。






写真・文:ミゾグチ ジュン
