初夏の勝沼、葡萄とワイナリー

2025年6月5日(木) 勝沼へ
真っ青な空の下で広がる山梨県勝沼の葡萄畑、風に揺れる葡萄の葉は初夏の太陽に照らされて瑞々しく輝いています。
この頃の葡萄畑では、生食用の種無し葡萄をつくるためにジベレリン処理が行われています。
満開後の葡萄の房、一つ一つを手作業でジベレリン溶液を満たしたカップの中に浸すことによって、葡萄は受粉することなく種の無い実が出来上がります。
後日には、実の肥大を促すことを目的とした2回目のジベレリン処理が行われます。
種無しと種有りでは、種が有る葡萄の方が味に深みがあって美味しいそうです。
けれども、食べ比べてみて味の違いを知っても、訪れた方々が購入するのは種無しの葡萄なので、現在ではジベレリン処理は必要な作業になっていると言います。
生食用の葡萄とは違って、ワイン用の葡萄は味に深みのある種有りの葡萄を使用するので、一般的にはジベレリン処理は行わないとのことです。
種無し葡萄が生まれたのは1958年(昭和33年)のことで、山梨県の試験場でデラウェアの収量を増やすことを目的に植物ホルモンの一種であるジベレリンを用いた試験を行った際に、種の無い実が偶然に発見されました。
そのことから種無し葡萄を作ることに方針を変え、1959年(昭和34年)にジベレリン処理による試験で36房のデラウェアの種無し葡萄が収穫され、その翌年には初出荷されて人気を博したことによって、現在では他の葡萄品種を含めて種無しが主流になっています。
甲府盆地の東部に位置する勝沼は、一日の寒暖差が大きく、日照時間が長く、年間降水量が少ないことから、葡萄の生育に適した地域になっています。
しかしながら、気候変動によって近年は葡萄の生育が早まったことで、葡萄が収穫できる期間が以前に比べて早く終わるようになり、それに伴いワインを造り始める時期も早くなってきたと言います。
葡萄の栽培が盛んな勝沼には、31軒のワイナリーが案内所などで配布されているワイナリーガイドに記載されており、そのうち28軒のワイナリーに一般の人が訪れることができます。
歩いてワイナリーを巡ることができるくらいの狭い範囲にいくつかのワイナリーが集まっていますが、坂が多く高低差があるため、実際に歩いて巡るには体力と気力が必要です。
なので、昼頃におなかが空いたら、山梨県の郷土料理「ほうとう」を汗をかきながら食べれば、午後からも元気にワイナリーを巡ることができるようになるでしょう。
訪れたワイナリーでは、無料もしくは有料でワインの試飲ができ、運転手であればワインの香りを嗅がせてくれることもあり、もし気に入ったワインが見つかったらその場で購入できます。
試飲でワインの違いを楽しむのも良いですが、何より楽しいのはワイン造りや販売に携わっている方々と直接会話ができることで、運が良ければワイナリーの代表の方がカウンターに立っていることがあるかもしれません。
例えワインに詳しくなくても、ワインがちょっと苦手でも、いろいろなことを教えてくれるので、数あるワインの中で「これなら」と思えるワインのボトルに手を伸ばすきっかけになります。
それぞれのワイナリーでは、試飲だけではなく工場見学ができたり、カフェやレストランが併設されていたりと、それぞれの特徴があります。
また、売り場もさまざまな工夫が成されており、いかにしてワインの魅力を伝えようかというその苦心が見られることがあり、あるワイナリーではワインのボトルのラベルを葡萄の形に変更することやボトルの栓に個性を持たせたりと、それらの工夫によって手作業による労力が増えてしまうことも厭わない試みが、ワインをもっともっと気軽に楽しんでもらいたいというワイナリーの気持ちを感じさせてくれます。
他では、ワイン貯蔵庫で音楽とワインを組み合わせたイベントを30年以上開催していたりと、ワインを心から楽しむ人が共有できる空間や時間を創り出してくれるワイナリーもあります。
勝沼で、新酒のワインが解禁されるのは毎年11月3日です。
熟成させることで深みのある味わいとなるワインとは違い、今年収穫した葡萄が使われ軽やかな味わいを口にできる新酒のワインの解禁は、ちょっと早いですが今年を締めくくるには最良の機会となります。
今から解禁のその日までに、週末や日々の仕事の合間を見計らって勝沼へ葡萄の生育を眺めに行ったり、ワイナリーを巡って新たな発見をしてみたり、美味しく実った葡萄を食べてみたり、ワイン用の葡萄を見せてもらったり、勝沼の1300年の葡萄と140年のワインの歴史を学んでみたりとさまざまな準備をすることで、新酒を口にした際により幸せで有意義な人生の瞬間を迎えることができることでしょう。




